山形県鶴岡市にある〈尾川園〉は、昭和25年創業の老舗お茶屋さん。この土地で、三代にわたりお茶を届け続けてきました。
「お茶は、人と人、想いと人をつなぐ“縁”のようなもの」と話すのは、現在〈尾川園〉を営む、尾川勝洋さん。
2023年にオープンした〈ogawa en cafe〉への思いも含めて、お話をうかがいました。
お茶との出会いは
大袈裟な言い方になるかもしれませんが、生まれた時からお茶に囲まれて育ってきました。自宅兼となっていたお茶工場で祖父と父が大きな声を出しながら仕事をしてました。学校から帰るとお茶の香りいっぱいの自宅でしたね。今もそうですが。
お茶屋としてのはじまり
弊社は昭和25年、私の祖父が創業した日本茶の専門店です。当時はお茶、海苔、鏡などを売って商売をしていたようです。その後、私の父が会社を引き継ぎ、現在私も一緒に営んでいます。
お店の歴史と地域との関わり
山形県鶴岡市は日本海と出羽三山に囲まれた自然豊かな街です。ユネスコ食文化創造都市にも認定され、山の幸・海の幸を楽しむことができます。残念ながらお茶の生産はほとんど行われておりませんが、弊社では日本各地から様々なお茶を仕入れ、地域の皆様に日々喜んでいただけるよう繋がりを大事にしております。
忘れたくない景色
ありきたりになってしまうかもしれませんが、お客様に「美味しかった」と言われるのがやはり嬉しいですね。最近では小さいお子様の来店も増え、スイーツをはじめ日本茶を喜んでいる姿にはこちらも嬉しくなってしまいます。
ogawa en cafe について
一般家庭における急須離れ、日本茶離れが加速し、ご自宅で日本茶を飲むという習慣は少なくなりました。ただそれとは反比例するように日本茶への注目は高まっていると思います。
2023年7月、気軽にもっと日本茶を楽しんでいただきたい、美味しさを知っていただきたいという思いから <ogawa en cafe> をオープンしました。
カフェメニューに込めた思い
ogawa en cafeでは原材料、特に日本茶にこだわってメニューを提供しています。例えば抹茶であれば京都宇治の老舗抹茶問屋より上質な抹茶を仕入れ、クレープやかき氷、ドリンク等にふんだんに使用しております。他では味わえない日本茶専門店ならではの味わいになるように、一つ一つ丁寧に手作りして提供しております。



(編集部注:なんてオシャレで美味しそうなスイーツたち!!)
季節ごとのおすすめの楽しみ方

今で言えば(5月)新茶の季節になりますので、青々とした新芽の香りを楽しんでいただきたいと思っておりますが、季節だけではなくその日の気分や体調などでも変わってくると思いますので、お客様とコミュニケーションをとりながらその時にあったお茶を提供できればと考えております。
尾川園のこだわり
鶴岡市はお茶の生産地ではありません。弊社では静岡県の製茶工場と連携して、鹿児島・静岡・京都など全国の産地からお茶を仕入れて、一年を通じてお客様に美味しいお茶を提供できるように努めております。
お茶本来の楽しみ方とは?
確かにお茶にはお湯の温度や茶葉の量など美味しい淹れ方はあります。私もインストラクターとして講師をすることもあるのですが、結局は飲み慣れた飲み方を楽しんだり、その時の気分で味を調整できるのも日本茶の良さですし、お一人お一人の好みに合わせた味と香りを楽しんでいただければと思います。
お茶の文化と暮らし

私は小さい頃から、食後は家族で父が急須で淹れたお茶を飲むのが習慣となっていました。家族のだんらんの中にお茶があり、気づけば今では私が淹れるようになっています。ただ現在では家族の在り方や日本茶離れの影響もあり、そんな風景も少なくなったかもしれません。こんな時代だからこそ、家族・友人・人を繋ぐあったかいお茶を大事にしていきたいですね。
変わること・変えないこと
長い目で見るとお茶に関しては変わってきたことが多かったと思います。食文化の多様性などにより様々な飲み物が増え、古い話になりますがお茶も急須からペットボトル飲料が主流となりました。
そんな中オープンしたカフェでは若い世代が釜・急須から淹れたお茶を楽しんでいます。また海外からのお客様も増え、今また新たな日本茶文化を築き始めているようにも見えます。そんな中でもおもてなしの心を忘れず、私たちは変わらず一杯のお茶を丁寧にお客様に淹れることを心がけ、これからも提供していきたいと考えています。
最後に
今海外では和食や抹茶がブームとなっています。健康志向の高まりや日本文化への関心の高まりが要因と言われています。ただ日本人にとってお茶は単にブームで片付けられるものではなく、昔から愛されてきた文化の一つだと思っています。
家族や友人はもちろん、ビジネスの場でも来客があればお茶がさっと出てくる——今ではなかなか見ない光景ですが、日本茶はただのドリンクではなく、人と人との「縁」を築いてきたツールの一つだと思っています。
これからも ogawa en cafe はそんな「縁」を築いていきたい。人と人、地域と人、想いと人を繋ぐためのあったかい日本茶をこれからも皆様に提供できるように努めてまいりたいと思っております。
「あったかいお茶、いかがでしょうか」
あとがき
取材を通じて感じたのは、一杯のお茶の背景にある、たくさんの「つなぐ力」でした。日本各地から選び抜いたお茶の魅力を、香りや味わいごと丁寧に伝えていく。尾川さんの仕事は、つくり手とお茶を味わう人を結ぶ架け橋であり、日本茶文化そのものを未来へ紡ぐ、大切な役割を担っていると感じました
人と人をつなぐ「縁」としてのお茶。
鶴岡の地でその温もりをていねいに届ける尾川さんには、お話を伺うだけで心がホッとするような安心感があります。尾川園のホームページやInstagramを拝見しているうちに、伝統を大切にしたいという気持ちが自然と湧いてきました。日本茶の文化がこれからも日々の暮らしのそばにあることを願っています。
変わっていく時代の中でも、変わらないものがある。そのひとつとしてのお茶の魅力をこれからも多くの人に伝えていきたいと思います。
(取材・文:Pon|TOLOC編集部)
📍 ogawa en cafe(尾川園 みゆき通り店)
住所:山形県鶴岡市本町1-6-18
Googleマップ
電話番号:0235-22-1819
営業時間:
平日:11:00〜18:00(L.O. 17:00)
土日祝:10:00〜18:00(L.O. 17:00)
定休日:水曜日
駐車場:店舗隣に2台分あり
尾川園のホームページはこちら🍵
https://ogawaen.com/
Instagramはこちら🍵🍨
https://www.instagram.com/ogawaen0610