【輪島/醤油】能登・輪島 谷川醸造さんの「およね日記」に励まされた日|伝統の醤油蔵と再建への歩み

能登(石川)

—— いしるから始まり、およね日記に出会う|谷川醸造さんとの小さなご縁


いしるとの出会い

輪島でのボランティアを終えた夫が、おみやげに「いしる」を買って帰ってきました。
ふたを開けた瞬間、ふわりと広がる海の香り。
その力強い風味に惹かれて、「このお醤油、どんな人が作っているんだろう?」と、私は自然とラベルを辿り、谷川醸造さんのホームページにたどり着きました。

調べてみると、「いしる」は谷川醸造さんの製造ではなく、能登町のヤマサ商事さんが作られている魚醤でした。
谷川醸造さんはその「いしる」を販売されており、公式サイトではレシピ紹介なども丁寧に掲載されています。

👉谷川醸造さんの「いしる」販売ページはこちら

そしてページを巡る中で、一枚の写真に目が留まりました。

—— 醤油蔵の解体の様子。

この場所に、毎日の味が生まれていた

建物がなくなった場所にぽっかりと空が写っていて、そこに「何かがあった」ことを感じさせる風景でした。それはどこか心にぽつんと空いた穴のようで、でも、前へ向かおうとする確かな意志も伝わってきました。

およね日記に励まされた日々

そこから私は「およね日記」を読み始めました。
地震、そして洪水——その中で前を向こうとする日々が、まっすぐな言葉で綴られていました。


👉およね日記はこちら(谷川醸造公式ブログ)

「命ある限り、なんとでもなるでしょ。」


この言葉に、私は心を動かされました。
言葉には、こんなにも力があるのだと、思い知らされた瞬間でした。


地震から、再建へ

—— およね日記でたどる谷川醸造の歩み

2024年1月

能登半島地震が発生。谷川醸造の醤油蔵は全壊。
「みんな無事です」とおよねさんは日記に記し、避難の状況や家族の様子を丁寧に伝えてくれました。

2024年1月1日の能登半島地震で被災した谷川醸造の醤油蔵(写真提供:谷川醸造)

2024年1月〜3月

地震発生後、ご本人とお子さんのみ、約3ヶ月間を金沢で過ごされたそうです。
その間も、「およね日記」には日々の暮らしや思いが綴られていました。


2025年3月

醤油蔵の解体が完了。
その更地の写真に、私は思わずスクリーン越しに手を合わせたくなるような気持ちになりました。

2025年4月

埼玉県の笛木醤油さんから、木桶の支援の申し出が届きます。
これは単なる「応援」ではなく、「木桶職人という文化を守る」ための、大切な継承の形でもありました。

「私たちだけでなく、職人さんを守ることにも繋がるなら」と、およねさんはその申し出を受け入れました。

2025年5月

仮設住宅地にコミュニティセンターがオープン。
日常が少しずつ戻りはじめた輪島の様子に、小さな灯りが灯るような安心を覚えました。


谷川醸造さんについて

谷川醸造さんは、明治38年に創業し、大正7年から醤油製造を開始。能登・輪島の地で100年以上にわたり、伝統の味を守り続けてこられた老舗の醸造元です。

代表的な「サクラ醤油」は、地元の食卓で愛され続け、故郷を離れた人にとっての“ふるさとの味”として親しまれています。

また、日本独自の文化「糀(こうじ)」を大切にし、
・糀文化の保存・伝承
・子どもたちへの体験活動
・地域食材を活かした商品づくり
などにも取り組まれています。

災害を経た今もなお、食と文化を未来へつなぐ営みを丁寧に続けておられます。

👉谷川醸造さんの公式サイトはこちら


写真のご許可と、谷川さんからのメッセージ

ふたたび味を届ける日へ向かう、素敵な笑顔のおふたり。

今回のこの記事では、谷川醸造さんのホームページや「およね日記」から、写真の使用をご許可いただきました。
代表の谷川千穂さんからは、こんな温かいお返事が届きました。

「実際能登へ来られて、ボランティア活動して現状を伝えていただく。
そのことが、何よりもうれしく、
そのようなことが、まだこれからも必要な支援だと感じております。」

蔵の再建にはまだ時間がかかるかもしれません。
それでも、「言葉で伝えること」や「人のつながりを残すこと」が、これからを支える土台になる——そう信じられるようになりました。

再びこの味がたくさんの方に届きますように。

👉「能登のお醤油」商品ページはこちら(谷川醸造公式サイト)


おわりに

「いしる」から始まった、ささやかなきっかけ。
広がっていったのは、味や商品を超えた「強さ」と「やさしさ」でした。

正直なところ、今の私に何ができるのだろうと、何度も考えました。
現地に行ってできること、継続して関わっていけること…。その手段を探しながら、ずっと気持ちは能登に向いています。

無責任なことは言えないけれど、それでも行動したいと思っています。

こうして綴ることが、本当に誰かの力になるのか――迷いもありました。
それでも書かずにはいられなかったのは、「およね日記」との出会いがあったからです。

これからも、今の輪島を自分なりの言葉で伝えていきたいと思います。

谷川醸造さん、そしておよねさんのこれからに、心からの敬意と応援を込めて。


※写真クレジット

本記事で使用している写真はすべて、谷川醸造様よりご提供いただいたものです。
ご快諾いただき、心より御礼申し上げます。