和歌山・白浜で出会った、余白と美しさのあじわい
旅の思い出は、風景とともに、
どんな音がしていたか、どんな香りがしたか、
そして、何を味わったか——。
それらすべてが重なり合って、心に残っていくもの。
これは、そんな素敵な旅の「あじわい手帖」です。
和歌山・白浜を家族で訪れたとき、私たちはあるカフェに立ち寄りました。
それが、「かげろうカフェ」。


——ふと足を止めたその場所で、やさしさに満ちたお菓子に出会いました。

名前は、「かげろう」。
まるで春の陽炎のように、そこにあるのに、すっと消えていってしまうような——
そんな、淡く、儚く、美しい名前です。
カフェでは、「生かげろう」をいただきました。
ふんわりとした生地に、
なめらかなクリームが包まれていて、口に入れた瞬間、
ほっとため息が出るような優しい甘さが広がります。
子どもたちも笑顔で頬張り、静かに流れる時間の中で
家族みんなが癒されているのを感じました。
「かげろう」という名前にぴったりの、
ふわりとほどける口どけ。
外はやわらかくサクッと、中はふんわりやさしく。
気づけば、すっと消えてしまって、
「あれ、もうないの?」と思ってしまう。
でも、不思議なことに味の余韻は残っていて——
また出会いたくなる、そんなお菓子でした。
あまりに気に入ってしまって、カフェを出るときに6種類のお味をお持ち帰り。
いちごとクリーム、抹茶、チョコレート、キャラメル……
どれもそれぞれに表情があり、甘さも香りも、ほんのりと上品です。

子どもたちも目を輝かせながら選んでくれて、
その時間までもが、旅の宝物になりました。
お味はもちろんのこと、印象深かったのはお店の方のご対応。
ひとつひとつに心を込めて接してくださる、
そのあたたかさに心がほどけました。
旅のあとで、
「このお菓子を、誰かに届けたい」と思いました。
おみやげとしてお隣さんに「かげろう」をお渡ししたところ
なんと、丁寧なお礼のお手紙が届いたのです。

お菓子を通して、気持ちが伝わったことがとても嬉しくて、
「かげろう」がつないでくれた小さなご縁に、心から感謝しました。
この感動をどうしても言葉にして残したくて、
製造元である福菱さんに
「記事でご紹介させていただきたく、写真をお借りできますか?」
とご連絡したところ、すぐにご担当の小中様より、たいへん丁寧なお返事をいただきました。
美しい写真とともに、温かい言葉を添えてくださったご対応に、また胸があたたかくなりました。
「かげろう」は、お茶にも、コーヒーにも、
紅茶にも、すっと寄り添ってくれる、
おしとやかで、気配りのできる方のようなお菓子です。

一口でほっとして、二口目にはもう恋しくなっている。
「消えちゃった…また会いたい。」そう思わずにはいられません。
「かげろう」は、ふんわりと消えるからこそ、
心の奥にずっと残り続ける、忘れがたい味となるのです。
「かげろう」が教えてくれた出会いに、
心からの感謝をこめて。(TOLOC編集部)
▫️かげろうカフェ(福菱 本社直営カフェ)

所在地:
和歌山県西牟婁郡白浜町1279-3
営業時間:8:00~18:00(ラストオーダー 17:30)
定休日:年中無休(※変更の可能性あり)
公式サイト:https://www.fukubishi.co.jp
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