【沖縄/空手】沖縄から広がる「武の心」清道会

うるま市(沖縄)

清道会の伝統と、今を生きる空手家の想い
ー沖縄の武をたどるー

琉球古武道 清道会・松田さん

沖縄の地で受け継がれてきた武道のこころ。1988年に設立された「琉球古武道 清道会」は、流派を超えて武の本質を追い求める空手・古武道の団体です。

今回は、清道会で指導を行っている松田さんにお話を伺いました。


清道会の成り立ちと名前に込めた意味

琉球古武道清道会は、1988年に設立された沖縄の空手・古武道の団体です。会長の知花良光先生が先頭に立ち、発足されました。

清道会は、少林流・金城珍作先生、一心流・島袋龍夫先生、本部御殿手・上原清吉先生という偉大な師の「技と心」を守り、流派にとらわれず武道の本質を探求していくことを理念に掲げています。団体名の「清道会」は、師の一人である上原清吉先生から「清」の一文字をいただき、名づけられたものです。


師から受け継いだもの

私の師匠は、清道会 会長の知花良光先生です。武勇伝はたくさんありますが、ご本人はあまりご自分のことを語られない方。ですので、そこは「弟子になってからのお楽しみ」ということで(笑)。

さまざまな教えの中でも、私が特に大切にしているのは「人を敬うこと」です。恥ずかしい話ですが、武歴を重ねて指導する機会が増えるにつれ、自分自身の稽古が疎かになっていた時期がありました。

そんなとき、師から一喝されました。

教えるんじゃない。逆に教わっているんだよ。」

この言葉にハッとさせられ、初心の心を思い出しました。それからは、一から仲間と一緒に稽古に励むようになりました。


「武の心」とは何か

清道会が掲げる「武の心」とは、単に技術を学ぶだけではなく、人格形成や精神的な成長を重んじる考え方です。武道には明確な答えがあるわけではありません。だからこそ弟子たちは、自分自身の「武」を築きあげていくことが求められます。

先人たちから受け継いだ技と心を、これからも守り、鍛錬し続けていきます。


空手との出会いと哲学

私が空手と出会ったのは7歳のときです。当時、カンフー映画が大好きで「いつか自分も強くなりたい」と思っていた頃、近所に町道場があるのを知り、見学に行ったのがきっかけでした。成長する中でスポーツ空手や他流派の稽古も経験しましたが、師匠は最初に出会った知花先生のままで、今でも変わりません。稽古日以外にも時間があれば道場に足を運び、太陽が沈むまで巻き藁での指導を受けたことを、今でも鮮明に覚えています。

沖縄の伝統武道は、単なる技の習得にとどまらず、人格の形成や精神的な成長を重視するものだと、私は考えています。続ける中で、自然とあいさつや人を敬う気持ちが身についていました。

もし空手を辞めていたり、出会っていなかったらどうなっていたかと思うと、沖縄空手・琉球古武道を学んで本当によかったと感じています。


地域社会とのつながり

地域のお祭りや演武会に参加するなど、清道会は地域とのつながりを大切にしています。私自身も福祉施設で沖縄空手を指導する活動を続けており、空手の楽しさを微力ながら伝える機会をいただいています。

道場によって理念や考え方は異なると思いますが、子どもにも大人にも共通して伝えていきたいのは「敬う心」です。


伝統の継承とこれから

清道会は、少林流や本部御殿手など、さまざまな流派を受け継ぎながら、地域の沖縄空手家からも多くを学び、現在の形に至っています。

伝統的な技術を守りながら、仲間と切磋琢磨し、「武の探求」を続けています。

これからも、時代を超えて師匠からの教えを理解者と共に守っていけたらと考えています。


清道会の代表的な型について

清道会では、先人たちから伝えられた伝統型、琉球古武道、そして本部御殿手を土台に、技術体系の中で生まれた創作型も含め、約30種類の型を保存しています。どれか一つに絞るのは難しいですが、型の意味をしっかりと理解しながら稽古を重ねています。

また、教える際に最も重視しているのは「基本」です。立ち方、歩行、受けなど、一つ一つの動作を丁寧に積み重ねていくことを大切にしています。


県外・遠方でも学べる場について

現在、清道会の活動拠点は沖縄を中心としながらも、大阪府や愛知県にも仲間が在住し、各地で活動を続けています。また、県外からの問い合わせも多く、より多くの方に清道会の魅力を伝えたいという思いから、師匠の許可を得て3年前にオンライン稽古を始めました。県外の仲間が沖縄を訪れた際には、直接指導の機会も設けており、物理的な距離を超えて学び合う場が広がっています。

現在、愛知では支部道場として、大阪では稽古会として活動中です。

今後も理解者がいれば他の地域にも伝えていきたいと思っています。少人数制のため一人ひとりに合った細やかな指導が可能で、より効果的な学びが実現できています。


最後に:空手と生きるということ

清道会に興味を持ってくださった皆さまへ、心より感謝申し上げます。武道は、単なる技術の習得ではありません。心と体を鍛え、礼儀や敬う心を学び、自己成長を促す道でもあります。

清道会では、基本を大切にし、先人の教えを守りながら日々鍛錬を続けています。初心者の方も大歓迎です。まずは体験から始めてみてください。武道を通して新しい仲間と出会い、共に成長していく喜びを感じていただけると思います。

あなたのご参加を、心よりお待ちしています。


あとがき

清道会が大切にしている「人を敬う心」。それは道場の中だけでなく、日常のすべてに通じる姿勢なのだと思います。沖縄の地に根ざしながら、オンラインや県外の仲間にもその精神が広がっていること。そして、技だけではなく心を継承しようとする姿勢に、深い敬意を抱きました。

松田さんは、まだお若いながらも、沖縄空手の真の心をまっすぐに伝えておられます。
その言葉の一つ一つには、受け継いできたものへの誠実さと、ご自身の内から育ててこられた哲学がにじんでいました。師の教えを大切にしながらも、時代の変化に応じて“伝える形”を工夫されている姿に、これから文化をつくっていく人としての頼もしさを感じました。

もしこの記事を読んで、「ちょっと見学してみようかな」と思ってくださる方がいたら、それはきっと新しい何かの始まりです。空手は、誰かと比べるためのものではなく、自分自身を整え、育てていく道。

清道会がその「道」の入口になってくれるかもしれません。

(取材・文:Pon|TOLOC編集部)

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https://seidou-kai.com/